劇団山の手事情社 『YAMANOTE ROMEO and JULIET』

劇団山の手事情社 『YAMANOTE ROMEO and JULIET』
劇場=西巣鴨:にしすがも創造舎 特設劇場
10/10(金)−19(日)
評価:★★★★(Very Good)10/18(土)夜所見
●作=ウイリアム・シェイクスピア
●構成・演出=安田雅弘
●キャスト=山本芳郎、倉品淳子、浦弘毅、大久保美智子、水寄真弓、川村岳、山口笑美、岩淵吉能、三村聡、斉木和洋、越谷真美、三井穂高、櫻井千恵、小栗永里子、安部みはる、浦浜亜由子、下野雅史、谷口葉子
●照明・舞台美術=関口裕二(balance,inc.DESIGN)
●音響=斎見浩平
●舞台監督=本弘
●衣装=竹内陽子
●宣伝美術=福島治
●演出助手=小笠原くみこ
●制作=福冨はつみ
●製作=劇団山の手事情社 有限会社アップタウンプロダクション UPTOWN Production Ltd.
 山の手事情社の「ロミジュリ」は、3本立て。ここ3年ほどは複数の作品で3本連続上演という企画をやってきた山の手が、1つの作品から3つの舞台を作るという意欲作。


 まず最初が「妙本」で、「ロミジュリ」の脇役で重要な人物たちを解説していきながら、物語をおさらいするもの。
 2本目の「妄想」は、役者たちが「ロミジュリ」から妄想して作った4つシーンを、観客が移動しながら見ていくという実験的なもの。妄想というだけあって、かなりぶっとんだものがあって、「ヴェローナの街に漂う殺気」というものは女優たちがワンピをガバッとめくって上下とも下着だけになったところに、ひとりの男優が墨でマルを何重にも書いていく。これはもちろん、男たちの妄想を刺激する、という意味もあるだろうが、常に殺人や暗殺が行われていたヴェローナの人々の不安を、標的のような形で表現していた。
 そして、もうひとつ、「ジュリエットの墓」というのがあって、これは埋葬されたジュリエットとそこにお参りに来た人たちの交流を描いているが、これが出色の出来。ジュリエットは巨大なビニールの袋に入れられていて、やってくる人たちから色んなものを渡される。手紙や花や飲み物や食べ物などなど。ジュリエットはそれを受け取って、生きていた頃と同じように読んだり食べたりしようとするが、透明なビニールにさえぎられて、かなわない。お参りに来た人とも交流できそうでいて、それは一方通行のものに終始する。ジュリエットとそれを取り巻く人たちの断絶が表現されていて、4つある「妄想」の中でいちばん物語の本質に迫っていた。
 そして3本目は山の手お得意の「印象」。「ロミジュリ」から受け取れる印象を舞台化したもので、ここでも透明なビニールがロミオとジュリエット、ふたりを包み込み、周りの人たちとふたりの断絶を表現していた。ただ、原作がシンプルで完成度の高い作品のためと、前の「妙本」「妄想」で、作品の内容が整理されていたこともあってか、非常に整理され、分かりやすい感じの「印象」となった。前作『摂洲合邦辻』で、過激な作品解釈(=解体)を見せてくれただけに、今回ももう少し過激に解体してもよかったような気がした。

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