燐光群+グッドフェローズ プロデュース「ポッシブル・ワールド」

7月31日(木) — 8月17日(日)  下北沢:ザ・スズナリ
●作=ジョン・マイトン
●翻訳=常田景子
●演出=坂手洋二
●出演=裕木奈江、大西孝洋、川中健次郎、瀧口修央、藤井びん
評価:★★★★ (Very Good) 8/14(夜)所見


 海外作品の翻訳上演でも優れた舞台を見せてくれている燐光群が、今度はカナダの劇作家ジョン・マイトンの戯曲を翻訳上演した。「CVR」「ララミー・プロジェクト」といった一連のドキュドラマとは異なり全くのフィクションであり、坂手の作品によくある社会問題をモチーフにしているわけでもない、燐光群にとっては異色作。「CVR」「ララミー・プロジェクト」に比べるとインパクトという点では大人しいかもしれないが、なかなか面白かい作品だ。
 物語は非常に優秀な証券マンが殺され、その脳だけが盗まれるという不思議な事件を追う刑事達と、その殺された男の生前の出来事がカットバックして進行する。そして、その殺された男というのが、いくつもの異なる人生”ポッシブル・ワールド”を行き来している、多重人格者であることが分かっていく−−。
 物語も夏向きのサイコサスペンスっぽくて見るものを飽きさせないが、何よりも主演の裕木奈江がいいです。彼女の出世作といっていいだろう。松本修の演出したこの春の「アメリカ」でもそこそこかわいい感じの役をそつなくいたが、今度のは元アイドルというのを抜きにして、舞台俳優として非常にいい演技を見せている。非常に細かい感情の起伏などをうまく表現していて、特に恋人とたわむれる場面など、こんなにリアルな演技は演劇の世界では見たことがないというくらい、とても自然な演技だった。燐光群の公演としては珍しく役者の魅力が光り輝くような舞台になっていた。

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