韓国国立劇団は「第13回現代日本戯曲リーディング公演」を皮切りとした海外戯曲朗読公演シリーズを8月7日から明洞芸術劇場で3週間上演する。これまでにも行ってきた韓日・韓中の演劇交流事業にフランス語圏の最新作まで加えて、世界の同時代の演劇の流れを紹介する企画だ。
「第13回現代日本戯曲リーディング公演」と「第9回中国戯曲リーディング公演」は、それぞれ韓日演劇交流協議会と韓中演劇交流協会が主導したアジア演劇交流プロジェクトで、国立劇団は明洞芸術劇場を会場として提供、広報・マーケティング支援を継続してきた。今年は新たにフランス及びカナダ・ケベックの作品も取り上げ、日本、中国、フランス、カナダ(ケベック)の4か国から計7編の作品をリーディング公演する。
シリーズの幕開けを飾る「第13回現代日本戯曲朗読公演」(8月7日〜9日)では、岸田國士戯曲賞を受賞した2作品、市原佐都子『バッコスの信女―ホルスタインの雌』(演出キム・スジョン)と、加藤拓也『ドードーが落下する』(演出キム・ヨンミン)の2作がピックアップされた。
市原佐都子は、人間の身体や欲望、現代社会のタブーを鋭い視点と独特のユーモア、圧倒的な言葉の力で舞台化し、国内外で高い評価を受けている。代表作に『バクスの神女』『モテる男』など。岸田國士戯曲賞をはじめ数々の賞を受賞し、世界各地のフェスティバルへも招聘されるなど、現代日本演劇を代表する創り手の一人だ。
『バッコスの信女―ホルスタインの雌』は、元家畜人工授精師の主婦が誤って上半身が人間で下半身が牛の「獣人」を生み出し、育児放棄された獣人の復讐や、乳牛の霊魂たち(コロス)の合唱を交えながら、資本主義社会における女性の身体や性がどのように統制され消費されているかを暴き出す。
一方、加藤拓也は劇団「和製」主宰。人間関係の機微や現代的な倫理観のズレ、社会のなかに潜む歪みをリアリティあふれる会話劇と緻密な構成で描き出す。舞台だけでなく、映画やテレビドラマの脚本・監督を務めるなど、映像と演劇の双方で高い注目を集める若手実力派で、『ドードーが落下する』で岸田國士戯曲賞を受賞した。
『ドードーが落下する』は、統合失調症を患って自殺をほのめかす芸人と彼を死なせないように見張り続ける友人を通じ、「正常」の境界線に鋭く問いを投げかける物語だ。
今回のリーディング上演では作者の市原、加藤も参加し、公演終了後に「アーティストとの対話」を通じて韓国の観客と交流する予定だ。
続いて、8月12日から16日には「第9回中国戯曲朗読公演」が開催され、中国の同時代作家3人の最新作を通じて現代社会の多様な現実が映し出される。
ガオ・ウィアン『逆転された未来』(演出ビョン・ヨンジン)は、核戦争後、身体改造によって「障害が特権となった世界」を描いたSF作品。非障害者が逆差別を受けるアイロニカルな状況を通じ、現実の差別構造とマイノリティのアイデンティティに鋭いメスを入れる。
シュー・グオチュアン『73番地半の借間人のマカオ奇談』(演出ソ・ジヘ)は、カジノの華やかな光景の裏に隠された、マカオの小市民たちの24時間をコラージュ形式でユーモラスかつビターに描き出す。
リウ・ジャオ『波が押し寄せる時』(演出パク・ジュヨン)は、死別した母親代わりを務めるAIと、ひとり立ちに不慣れな20歳の娘の会話でつづる一人芝居。不完全な2つの存在が互いを通して傷を癒やし、記憶を悼む過程を繊細に紡ぐ。
そして新たに取り上げられるフランスおよびカナダ・ケベックのリーディング公演がシリーズの掉尾を飾る形で8月21・22日に行われる。
ジャン=ブヌア・パトリコ『ダリウス(Darius)』(カティ・ラパン演出、劇団フランコフォニーとの共同企画)は、視覚と聴覚を失いつつあり、嗅覚だけが残された重度障害の息子のために、世の中の場所や美しい記憶を「香り」で再現してほしいと依頼する母親と調香師の旅を描いた二人芝居。
ファニー・ブリット『ビアビアンス(Bienveillance)』(演出イ・ウンジン、ケベック劇作家協会との共同企画)は、大手の弁護士が旧友の子どもに関わる不安な事件を担当するため故郷に戻り、過去の亡霊や家族と向き合うブラックコメディ。「善い行動とは何か」という哲学的な問いを通じ、人間の内面の小さな卑怯さと大きな矛盾をあぶり出す内容で、カナダ総督文学賞を受賞した作品だ。劇団バーバサーカスの協力で上演される。
今回のリーディング公演のシリーズについて、パク・ジョンヒ国立劇団団長兼芸術監督は「民間演劇界が長い間汗を流して成し遂げてきたアジア演劇交流の貴重な結実を明洞芸術劇場舞台で持続的に分かち合うことができ非常に意味深い。また今年は韓仏修交140周年を迎えてフランスとケベックなどフランス語圏で海外戯曲の世界を広げたことで、観客の方々が世界の同時代演劇の多彩な問題意識と魅力を深く経験することを願う」とコメントしている。
今ではミュージカルなどの商業ベースの作品は、韓流ドラマやK-POPの影響で完全に韓国からの輸出超過状態となっているが、ストレートプレイでは平田オリザ、野田秀樹、岡田利規といった日本の演劇人の作品が韓国でも上演されている。こうした流れを支えてきたのが、日韓演劇交流センターと韓国の韓日演劇交流協議会による交互開催でのドラマリーディングだ。今回、市原佐都子、加藤拓也の作品が韓国で取り上げられるが、来年1月27日(水)~31日(日)には東京の座・高円寺でイ・オジン、チャン・ヨンの作品がリーディング上演される予定だ。ミュージカルなどに比べると上演回数や観客動員などでは非常に小さな規模ではあるが、日韓の演劇交流の礎になっている企画だけに、今後も続くことが期待されるシリーズだ。






