新国立劇場バレエ団が最優秀カンパニーの快挙! ロイヤル・バレエの平野亮一も受賞、英ナショナル・ダンス・アワード2025

Photo by Foteini Christofilopoulou
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2025年に英国で上演されたバレエ公演で「最優秀カンパニー」に選ばれる

 

英国批評家協会(The Critics’ Circle)は6月15日、ロンドンのコロネット・シアターで「第26回ナショナル・ダンス・アワード(National Dance Awards、以下NDA)」の授賞式を行い、2025年1月から12月にかけて英国内で上演された舞台作品を対象にした各賞を発表した。

今回は、新国立劇場バレエ団のロンドン公演『ジゼル』が最優秀カンパニー賞(ステフ・ステファヌ賞)を受賞したのに加え、英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパル、平野亮一が『オネーギン』の演技で最優秀男性クラシック・パフォーマンス賞を受賞するなど、日本ゆかりの受賞が重なる結果となった。

英国批評家協会(The Critics’ Circle)が主催する『ナショナル・ダンス・アワード』は同協会のダンス部門に所属する批評家ら60名の投票によって選出されるもの。英国の舞踊批評家による唯一の賞であり、演劇界におけるローレンス・オリヴィエ賞に相当する権威ある賞として知られる。NDA委員長のグレアム・ワッツ氏は受賞発表にあたり、「スコティッシュ・バレエとスコティッシュ・ダンス・シアター、そして英国への初ツアーでこの栄誉を勝ち取った新国立劇場バレエ団に、しかるべき評価が与えられたことを大変嬉しく思う」とコメントした。

新国立劇場バレエ団『ジゼル』ロンドン公演が最優秀カンパニー賞

新国立劇場バレエ団『ジゼル』ロンドン公演
新国立劇場バレエ団『ジゼル』ロンドン公演

新国立劇場バレエ団『ジゼル』ロンドン公演より Photo by Tristram Kenton

 

新国立劇場バレエ団の受賞は、2025年7月24日から27日にかけて英国ロイヤルオペラハウスで全5公演が行われた『ジゼル』ロンドン公演が高く評価されたもの。演出は同劇団舞踊芸術監督の吉田都、ステージング・改訂振付はアラスター・マリオット、音楽はアドルフ・アダン、指揮はポール・マーフィー(24・25・26日夜・27日)と冨田実里(26日昼)、管弦楽はロイヤルバレエシンフォニアが務めた。キャストは米沢唯/井澤駿(24日、26日夜)、小野絢子/福岡雄大(25日)、柴山紗帆/速水渉悟(26日昼)、木村優里/渡邊峻郁(27日)の4組。現地メディアからは「世界の主要バレエ団と肩を並べる実力を持っていることを示した」との評を受け、各紙で軒並み5つ星評価を獲得。『ニューヨーク・タイムズ』紙の「2025年のベスト・ダンス・パフォーマンス」にも選出された。

授賞式では、駐英日本大使の鈴木浩氏からステフ・ステファヌ賞が吉田都芸術監督に授与された。吉田氏は受賞にあたり、自身がバーミンガム・ロイヤル・バレエおよび英国ロイヤル・バレエ団のダンサーとして過ごした英国での日々を振り返ったうえで、「日本人ならではのチームワークの良さが評価されたと思う。バレエの本場で通用することが分かり、また海外公演に挑みたい」と語った。

最優秀カンパニー賞は過去に英国ロイヤル・バレエ団やイングリッシュ・ナショナル・バレエなど名だたる名門が受賞してきた賞で、アジアのカンパニーとしては、第19回(2018年度)に『台湾クラウド・ゲート・ダンスシアター(雲門舞集)』が受賞して以来、2団体目。純粋なクラシック・バレエ団としては初の快挙となった。

ロイヤル・バレエの平野亮一、『オネーギン』主演で最優秀男性クラシック・パフォーマンス賞

今回のNDAでは、新国立劇場バレエ団の受賞に加えてもう一つ、日本にゆかりのある受賞があった。英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパル、平野亮一(42)が、ジョン・クランコ振付の物語バレエ『オネーギン』(プーシキンの韻文小説が原作)のタイトルロールで、最優秀男性クラシック・パフォーマンス賞を受賞したのだ。NDA委員長のワッツ氏も発表コメントの中でこの受賞に触れ、新国立劇場の快挙と並べて「日本にゆかりのある受賞」を特筆して喜びを表明している。

平野は兵庫県尼崎市出身。4歳から母・節子氏が主宰するバレエスクールでクラシックバレエを始め、2000年には全日本バレエコンクールでジュニア部門1位を獲得。2001年にローザンヌ国際バレエコンクールでプロ研修賞を受賞し、ロンドンの英国ロイヤル・バレエ団附属の研修生となった。2002年に正式にバレエ団最下級の「アーティスト」として入団。当初は目立たない役が続く時期もあったが、2007年にファースト・アーティスト、2008年にソリスト、2012年にファースト・ソリストへと地道に昇格を重ね、2016年にダンサー最高位の「プリンシパル」に昇格した。これは2006年の熊川哲也以来、史上2人目となる同バレエ団における日本人男性プリンシパルの誕生だった。

興味深いのは、平野にとって『オネーギン』が入団当初から特別な縁のある演目だという点だ。2002年の入団直後、急きょ代役として同作第3幕のコール・ド・バレエに出演したのが、平野のロイヤル・バレエでの初舞台だったという。以来、タチヤーナの夫グレーミン公爵役などを経て、満を持してタイトルロールに初主演したのは2020年1月。今回の受賞は、それから5年を経て、この当たり役であらためて高い評価を勝ち取った形となる。

受賞対象となった2025年の上演では、引退後にロイヤル・バレエのプリンシパル・ゲスト・アーティストとなったローレン・カスバートソン(本人も今回NDAのベスト女性ダンサー賞を受賞)がヒロイン、タチヤーナ役で平野と組んだ。現地の舞踊評では、その公演が「この10年で最高のパフォーマンス」と絶賛され、冷淡で気位の高いオネーギンが終盤で人間味をあらわにして崩れ落ちていく平野の演技の振れ幅を評価する声が相次いだ。

平野は受賞にあたり、「40歳を過ぎて体力的な衰えを感じる中での受賞だった。ベテランだが、まだまだ芸術面を追求していけると証明できた」と喜びを語っている。

第26回ナショナル・ダンス・アワード そのほかの受賞結果

最高栄誉となる「デ・ヴァロワ賞(功労賞)」は、振付家ラッセル・マリファントに贈られた。同氏は照明デザイナーのマイケル・ハルズとの協働により、光と身体の関係を探求する独自の作風で知られる英国現代舞踊界の重鎮で、1996年に自身のカンパニー、ラッセル・マリファント・カンパニーを設立。シルヴィ・ギエムとの共作『プッシュ』などで高く評価されてきた。

ダンサー部門のベスト男性・女性ダンサー賞は、ともに英国ロイヤル・バレエ団のウィリアム・ブレイスウェルとローレン・カスバートソンが受賞。両者にとって、これが3度目のナショナル・ダンス・アワードとなった。

中規模カンパニー賞には、創立40周年を迎えたスコティッシュ・ダンス・シアターが初受賞。スコットランドを拠点とする同カンパニーは新作『メアリー、クイーン・オブ・スコッツ』で2部門を制し、振付のソフィー・ラプラーヌがベスト・クラシック振付賞を、主演を務めたロザンナ・レニーが最優秀女性クラシック・パフォーマンス賞を受賞した。

独立系カンパニー賞は、2シーズン目を迎えたロンドン・シティ・バレエが2年連続で受賞。ベスト・モダン振付賞は振付家キム・ブランストラップが『ブレイキング・バッハ』で2度目の受賞となった(初受賞は2016年の『トランスフィギュアード・ナイト』)。新人賞(エマージング・アーティスト賞)は、ダンサーとしてのキャリアで知られるリアム・フランシスが、振付家としての活動で初受賞を果たした。

モダン・パフォーマンス部門は、マシュー・ボーン振付『レッド・シューズ』でヴィクトリア・ペイジを演じたコーデリア・ブレイスウェイト(女性)と、『クアドロフェニア』でジミー役を演じたパリス・フィッツパトリック(男性)が受賞。フィッツパトリックにとっては2023年に続く2度目の受賞で、授賞式では昨年亡くなった同作の振付家ポール・ロバーツに謝辞を捧げた。

最優秀クリエイティブ貢献賞には、イングリッシュ・ナショナル・バレエの音楽監督マリア・セレツカヤが選ばれた。映像部門では、ウェイン・マクレガーが演出・振付を手がけた没入型ダンス映像作品『オン・ザ・アザー・アース』がベスト・ダンス・フィルム賞を、ロイヤル・バレエ団員ヴィオラ・パントゥーゾがパリの街角で踊る短編『ラ・フェ・エレクトリシテ』がベスト・ショート・フィルム賞を受賞した。

授賞式は司会者・ジャーナリストのサミラ・アハメド氏の進行のもとで行われた。批評家協会のダンス部門に所属する60名の投票によって選出されるNDAは、今年は批評家による推薦数が過去最多となる379件(前年は365件)にのぼり、そこから最終候補75件が選出された。

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