2月19日(月)ー 27日(火)
新宿:文化学園体育館内特設舞台
評価:★★★★(Very Good)2/25(夜)所見
●作=近松半二、竹田和泉、北窓後一、竹本三郎兵衛
●台本・演出=宮城聰
●出演=美加理、吉植荘一郎、大高浩一、野原有未、萩原ほたか、、寺内亜矢子、本多麻紀、大内米治、片岡佐知子、鈴木陽代、桜内結う、星村美絵子、加藤幸夫、牧野隆二、赤松直美、奥島敦子、大道無門優也、山本智美、池田真紀子、、石川正義、本城典子、塩谷典義、高澤理恵
活動休止となるク・ナウカがまた現代演劇の豊穣なる成果を見せてくれた。
客入れをしていた役者のひとりが前説から自然と作品解説に入り、芝居を始める導入部はうまい作り。物語の登場人物を語りと影絵で処理するあたりは、和風とインドネシアの混合のような感じでク・ナウカらしい。話が安達原に移ると、大和朝廷と蝦夷の文化の違いを強調するため、蝦夷の地の者は怪しい言葉を使うので話が聞き取れないのは、やややりすぎの感もする。
老女岩手は源頼義が家臣、志賀崎生駒之助の恋人恋絹を殺して、その血で霊力を手に入れようとするが、恋絹を手にかけた瞬間、それが行方しれずになっていた我が子だと悟る。これを生駒之助に告げる岩手の心に広がる空虚を、美加理が見事に描いていた。夫の敵を取るためなら手段をも選ばずと固めた決心は、我が子をあやめることになった、人間の業。その業の空虚さを舞台手前に広がる安達原の真っ白いスペースが象徴していた。
そして一転して岩手の息子の安倍貞任が登場して、生駒之助たち朝廷側と退治する場面になると、貞任は巨大な地球儀を手に持ち、いっきに舞台は奥州安達原から、ヨーロッパに侵略された世界の国々へと拡大し、現代のイラクやイランへと突き進む。宮城聰とク・ナウカのメンバーは、いつの世も争い事が絶えない人間という存在の業の深さを時代と空間を切り裂いて我々の目の前に見せてくれた。
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