座・高円寺が新体制でリニューアル 2026年度ラインアップ発表「劇場から、想像力を耕す」

リニューアルを象徴するシンボルを劇場壁面に掲げた座・高円寺
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17年の実績を受け継ぎ、合同会社syuz’genによる新体制で再出発した座・高円寺。日韓国際共同製作など意欲的な8プログラムが出そろった。

杉並区立杉並芸術会館(座・高円寺)は、開館以来運営を担ってきた特定非営利活動法人劇場創造ネットワークから合同会社syuz’genへと指定管理者のバトンを引き継ぎ、新たな幕を開けた。4月2日に発表された2026年度の事業計画では、前体制が17年間積み上げてきた「地域に根ざした公共劇場」としての高い志を継承しつつ、次世代へと繋ぐ8つの主催プログラムが公開された。

■劇場文化を耕した17年間の歩みを次代へ

前指定管理者の劇場創造ネットワークは座・高円寺開館のために設立されたNPO法人で、初代芸術監督・佐藤信氏とともに開館以来「劇場の広場性」を掲げ、単なる貸館ではない、創作と育成、そして地域交流が一体となった日本屈指の公共劇場モデルを築き上げた。今回、新たに指定管理者となったsyuz’genも、これまでの実績を踏まえつつ、シライケイタ現芸術監督のもとでさらなる発展を目指すという。

新体制が掲げるミッション「劇場から、想像力を耕す」は、前体制が大切にしてきた「市民の日常に寄り添う表現の場」という理念を現代的にアップデートしたものであり、リニューアルされたシンボルマーク(芝居小屋から着想を得たテント型のデザインに、正円の円弧で構成された「座」のロゴタイプを組み合わせたもの)にもそのコンセプトが込められている。

座・高円寺のリニューアルシンボル

「すべての人にひらかれた劇場」をコミュニケーションコンセプトとして、作成されたリニューアルシンボル。

■ 2026年度 主催事業8プログラム

新年度は、前体制のレガシーを継承する作品から、新たな視点による意欲作まで、多角的なプログラムが展開される。特に大きな変化としては、これまでの「劇作家協会プログラム」に加えて、杉並区が日本演出家協会ともパートナーシップを締結したことを受けて、「日本演出者協会セレクション」が加わったことだ。

また、劇場による主催事業は下記の8プログラムが予定されている。

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座・高円寺 2026年度 主催8プログラム
期間 企画名 備考 区分
4月8日(水)〜5月17日(日) ギャラリーおちらしさん特別展 in 座・高円寺 地下2F 区民ギャラリー
企画:株式会社ネビュラエンタープライズ
主催
4月29日(水・祝)〜5月17日(日) 梅田哲也『空洞』 主催
6月中旬 劇団温泉ドラゴン × 劇団国道58号線
日韓共同製作『長生炭鉱ー生きたかった』
作:キム・ミンジョン(劇団国道58号線/韓国)
演出:シライケイタ(劇団温泉ドラゴン/日本)
共同主催(国際)
7月下旬〜8月初旬 高円寺プレイグラウンド(仮) 主催
9月13日(日)〜10月17日(土) 『夏の夜の夢』
原作:ウィリアム・シェイクスピア
上演台本:岩崎う大(かもめんたる)
演出:シライケイタ
杉並区内小学4年生の招待公演あり 主催
12月中旬〜下旬 アジア圏と日本のアーティストによる国際共同アートキャンプ(タイトル未定) 主催(国際)
12月下旬 ピアノと物語『トロイメライ』
作・演出:シライケイタ
主催
2027年2月下旬(予定) 座・高円寺 演技アカデミー 修了上演(演目未定)
演出:シライケイタ(予定)
5月開講・1年制 主催(育成)

■注目は温泉ドラゴンと『焼肉ドラゴン』のコ・スヒがタッグを組む国際共同製作

今回のラインナップの目玉の一つが、6月に上演される劇団温泉ドラゴン×劇団国道58号線(韓国)による『長生炭鉱ー生きたかった』だ。

本作は、1942年に山口県宇部市の長生炭鉱で起きた水没事故を題材としている。犠牲者の多くが朝鮮半島出身者であったという歴史的事実に光を当て、シライケイタ氏が率いる「劇団温泉ドラゴン」と、韓国の劇団「劇団国道58号線」が国境を越えてタッグを組む。

劇団国道58号線は、日韓演劇交流の象徴的な存在として知られる韓国の実力派女優コ・スヒが、2023年に本国で立ち上げた劇団だ。コ・スヒは2008年、新国立劇場と韓国・芸術の殿堂による日韓共同製作『焼肉ドラゴン』への出演を機に日本の演劇と深く結びついた女優で、同作で第16回読売演劇大賞優秀女優賞を受賞。日本出身以外の俳優による同賞初受賞という快挙を成し遂げた。劇団国道58号線としての日本公演は今回が初となる。

「悲劇を忘れない」という政治的なメッセージに留まらず、今を生きる両国の表現者が対話を重ね、舞台の上でいかに人間としての尊厳を描き出すか。前体制が重視してきた「社会と繋がる演劇」の精神を、国際的なスケールで深化させる意欲的な試みとして期待が寄せられている。

シライケイタ芸術監督のコメント

2026年度、座・高円寺が新たな一歩を踏み出します。
今年度より、座・高円寺を運営する指定管理者が、特定非営利活動法人劇場創造ネットワークから合同会社syuz’genに変わることになりました。劇場創造ネットワークが区民の皆様と作り上げてきた魅力あふれる座・高円寺を、新指定管理者と共に更に輝く劇場へと飛躍させたいと思います。杉並区を、豊かな文化の発祥の地にするべく、座・高円寺の新たな扉を開け、文化の泉の湧き出る土壌を区民の皆様と共に耕していきたいと、心から願っています。そのための大きな方針を以下に記し、劇場の目指す未来を共有します。
芸術監督就任以来、私が掲げてきた「世の中のあるべき姿をまず劇場が創っていく」という大きなスローガンを、これまで以上に強く、より具体的に実現していきます。私の考える「世の中のあるべき姿」とは大きく二つあります。
一つ目は「誰も切り捨てられることのない世界」です。その実現のために『コンプライアンスの徹底』『アクセシビリティの充実』『区民に開かれた劇場運営』という大きな3つの柱を掲げます。コンプライアンスの徹底にはハラスメント対策も含まれます。誰もが安心・安全な環境で生きていける社会、公正で公平な社会、誰も飢えることが無く未来に夢を持てる社会の実現のために、座・高円寺が理想に向けて最大出力で走り出します。
もう一つは「戦争のない世界」です。武力で他者をねじ伏せようとする戦争は、対話と祈りの行為である舞台芸術の対極にある行いです。座・高円寺は、舞台芸術を追求することを通じて、戦争のない世界の実現にむけて微力ながら尽力していきたいと思います。
次に、具体的な運営方針を5つ挙げさせていただきます。

1 【「多様性」から「インクルージョン」へ】
劇場が、人々の集まる場所としての「広場」であるとともに、集まった人たちと共に生き、それぞれの個性が活かされる場所になっていきたいと思います。杉並区民はもちろん、人種・民族、障害の有無、性別・ジェンダー、年齢などを超えて、あらゆる人が垣根なく集まり、ともに在ることができる場所を目指します。

2 【「広く」開いた劇場から「遠く」まで届く劇場へ】
座・高円寺の取り組みや魅力を、区外や国外まで届けるべくアピールしていき、文化芸術界、国際社会において、誇りある唯一無二の劇場にしていきたいと思います。そのことが、全ての杉並区民の誇りであり続けることを目指します。

3 【国際交流の強化】
戦争や分断の加速する世界において、対話の芸術である舞台芸術を媒介にして、諸外国とのコミュニケーションを活発にしていきたいと思います。韓国・台湾・アジア各地との交流を強化し、更に遠い国々へと広げ、平和で文化的な杉並の未来を区民の皆様と共に創り上げていくことを目指します。

4 【人材の育成】
杉並の文化、そしてこの国の文化を支え発展させていく人材の育成に力を入れていきたいと考えています。能力を育てるだけではなく、文化芸術全般に対する造詣を深め、文化芸術を愛し、座・高円寺の未来を支えてくれる存在を育成したいと思います。劇場の魅力を共に創り上げ、更なる発展に寄与してもらう仲間と呼べる人材を育てていきたいと思います。

5 【世界に通じる高い水準の舞台芸術の創作・上演】
国内外のあらゆるアーティストが目指す劇場にしたいと思います。高い水準の舞台芸術が座・高円寺に集まることで、杉並区の文化水準を押し上げ、全ての杉並区民の誇りとなる劇場を目指します。

以上が、劇場の目指す大きな方針です。
今年度も魅力的なプログラムが並びました。昨年度までとの大きな変化として、「日本演出者協会セレクション」と銘打ったプログラムが新たに創設されました。会員数500人を超える、日本唯一の演出家団体である日本演出者協会が厳選したプログラムが並びます。これまで劇場を支えてきてくれた「日本劇作家協会プログラム」と並び、新しい座・高円寺の魅力を共に創出してくださる仲間の参入に、期待が膨らみます。
ここから、新事業者syuz’genの皆と対話を重ね、知恵を絞り、想像力と創造力を駆使して、新しい座・高円寺の魅力を沢山創出していきたいと思います。全ての杉並区民の皆様にとって誇れる劇場であり続けるため、そしてこの国の文化芸術の更なる発展のために、より刺激的で開かれた劇場にしていきたいと思います。2026年度の新しい座・高円寺を、何卒よろしくお願いします。

2026年4月
座・高円寺 芸術監督
シライケイタ

■「開かれた劇場」の新たなスタンダード

syuz’genは、劇場を「特定の誰かのための場所ではなく、日常の延長にある広場」にするため、ハラスメント防止ガイドラインの運用や、アクセシビリティの向上を運営の根幹に置く。また、2階の「まぁるいカフェ」(旧アンリ・ファーブル、4月9日リニューアルオープン予定)や、劇場入り口前広場で開催してきた食べ物市場「座の市」を、地域とアートカルチャーをつなぐ「劇場前マルシェ」としてリニューアル。さらに区民向け「杉並区民割引」サービスの導入など、地域住民に愛されてきたインフラを維持・向上させていく。

これまで前指定管理者が作り上げてきた17年間の実績を踏まえつつ、その上に新たな風を吹き込むsyuz’genが運営する座・高円寺の今後の展開に注目したい。

【インフォメーション】
2026年度の各公演スケジュールやチケット詳細は、順次「座・高円寺」公式ウェブサイト(https://za-koenji.jp/)にて公開される。

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座・高円寺 2026年度ラインアップ
日程 公演タイトル 詳細 種別 区分
4月8日(水)〜5月17日(日) ギャラリーおちらしさん特別展 in 座・高円寺 地下2F 区民ギャラリーで開催
企画:株式会社ネビュラエンタープライズ
主催
4月8日(水)〜12日(日) ドナルカ・パッカーン
『女の一生』
戦時下の初稿版完全上演
作:森本 薫
演出:川口典成
音楽:河崎 純
日本演出者協会セレクション 提携
4月25日(土)・26日(日)
12:00〜18:00
第18回高円寺びっくり大道芸2026~継承~ 高円寺各所で開催 地域 提携
4月29日(水・祝)〜5月17日(日) 梅田哲也『空洞』 主催
5月20日(水)〜31日(日) 劇団扉座 第81回公演
『愚者には見えないラ・マンチャの王様の裸』
作・演出:横内謙介 日本劇作家協会プログラム 提携
6月中旬 劇団温泉ドラゴン × 劇団国道58号線
日韓共同製作『長生炭鉱ー生きたかった』
作:キム・ミンジョン(劇団国道58号線/韓国)
演出:シライケイタ(劇団温泉ドラゴン/日本)
国際 共同主催
6月19日(金)〜28日(日) 演劇実験室◉万有引力◉第80回本公演
演目調整中
演出・音楽・美術:J・A・シーザー
構成・共同演出:髙田恵篤
公募作品 提携
7月2日(木)〜5日(日) 大駱駝艦 壺中天 舞踏公演
鉾久奈緒美『死者の書』
振鋳・演出・美術:鉾久奈緒美 公募作品 提携
7月9日(木)〜12日(日) 花組芝居
『レッド・コメディ~赤姫祀り~』
脚本:秋之桜子
構成・演出:加納幸和
公募作品 提携
7月下旬〜8月初旬 高円寺プレイグラウンド(仮) 主催
8月7日(金)〜11日(火・祝) 劇団だるめしあん 25周年記念公演
『ラブイデオロギーは突然に〈劇場版〉』
作・演出:坂本 鈴 日本劇作家協会プログラム 提携
8月14日(金)〜18日(火) OFFICE STOMP
ミュージカル『雲母紙鳶 KIRANOTOBI』
脚本・作詞・作曲・演出:藤倉 梓 日本演出者協会セレクション 提携
8月21日(金)〜25日(火) 糸あやつり人形 一糸座
創作人形浄瑠璃『新羅生門』
作・演出:横内謙介(劇団扉座) 公募作品 提携
8月29日(土)・30日(日) 東京高円寺阿波おどり関連企画
夏の座・高円寺阿波おどり@座・高円寺1
地域 提携
9月13日(日)〜10月17日(土) 『夏の夜の夢』
(杉並区小学4年生の招待公演あり)
原作:ウィリアム・シェイクスピア
上演台本:岩崎う大(かもめんたる)
演出:シライケイタ
出演:山﨑薫、木ノ下藤吉、滝本圭、西脇将伍、坂本夏帆、峰一作、ぎたろー/田中結夏(舞台手話通訳)
主催
10月19日(月)〜25日(日) Dance Now Asia Fes in Tokyo
〜アジアの都市を巡るダンスフェス〜
キュレーター:竹屋啓子
参加国:台湾、韓国、インドネシア、マレーシア、香港、フィリピン他
公募作品 提携
10月24日(土)・25日(日) 第20回 高円寺フェス2026 地域 提携
10月28日(水)〜11月5日(木) wonder×works『アカメ』 作・演出:八鍬健之介 日本劇作家協会プログラム 提携
11月9日(月)〜18日(水) カムカムミニキーナ『ゴールド饅頭』 作・演出:松村武 日本劇作家協会プログラム 提携
11月21日(土)・22日(日) 東京都高校演劇連盟第80回
東京都高等学校演劇コンクール中央発表会
公募作品 提携
11月26日(木)〜12月3日(木) プリエール『貧乏大臣大大臣(仮)』 作:竹田モモコ(ばぶれるりぐる)
演出:土田英生(MONO)
日本劇作家協会プログラム 提携
12月8日(火)〜13日(日) ももちの世界『タイトル未定』 作・演出:ピンク地底人3号 日本劇作家協会プログラム 提携
12月中旬〜下旬 アジア圏と日本のアーティストによる国際共同アートキャンプ(タイトル未定) 国際 主催
12月下旬 ピアノと物語『トロイメライ』 作・演出:シライケイタ 主催
2027年1月8日(金)〜10日(日) Co. Ruri Mito
三東瑠璃『新作ソロ』(タイトル未定)
演出・振付・出演:三東瑠璃 公募作品 提携
1月15日(金)〜17日(日) 果てとチーク
『くらいところからくるばけものはあかるくてみえない』
作・演出:升味加耀 日本劇作家協会プログラム 提携
1月20日(水)〜24日(日) 企画集団マッチポイント
『スリーウインターズ』
作:テーナ・シュティヴィチッチ
演出:松本祐子
日本演出者協会セレクション 提携
1月27日(水)〜31日(日) 日韓演劇交流センター
『韓国現代戯曲ドラマリーディング ネクストステップVol.3』
公募作品 提携
2月4日(木)〜7日(日) CHAiroiPLIN
おどる詩集『2000000000 orz』(仮)
作・振付・構成・演出:スズキ拓朗 日本演出者協会セレクション 提携
2月10日(水)〜14日(日) 劇団かもめんたる×かもめんたる
『UFO男(仮)』
作・演出:岩崎う大 公募作品 提携
2月10日(水)〜14日(日) 第18回座・高円寺ドキュメンタリーフェスティバル 提携
2月20日(土)・21日(日) 高円寺演芸まつり『座・高円寺寄席』 ※演芸まつりは2月12日(金)〜21日(日)高円寺各地で開催予定 地域 提携
2月下旬(予定) 座・高円寺演技アカデミー
修了上演『(演目未定)』
演出:シライケイタ(予定) 育成 主催
3月4日(木)〜9日(火) あやめ十八番『浮寝鳥(仮)』 作・演出:堀越涼 日本劇作家協会プログラム 提携
3月中旬 オフィス鹿
『私は頼まれてものを云うことに飽いた。』
作・演出:丸尾丸一郎 日本劇作家協会プログラム 提携

※日本劇作家協会プログラム:杉並区とパートナーシップ協定を結ぶ日本劇作家協会が、会員の応募作の中から推薦
※日本演出者協会セレクション:日本演出者協会が、会員からの提案企画(応募作品)の中から推薦
※公募作品:上演作品を公募し、応募作の中から芸術監督を中心に座・高円寺が選定したプログラム

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