THE・ガジラ「ゆらゆら」
 劇場=森下:ベニサンピット
9/15(月・祝)‐28(日)
評価:★★★★(Very Good)9/20(昼)所見
●作・演出=鐘下辰男
●出演=市原悦子、若松武史、高田恵篤、津田健次郎、池下重大、加地竜也、小林勝也(文学座)


 普段、役者よりも演出や戯曲に目が行きがちだが、この舞台ではとにかくひとりの女優に目が釘付けになった。市原悦子である。もう、他の役者、小林勝也とか、若松武史とか、ベテランのすごい役者揃いの中にあって、市原はまったく別の存在だ。
 普通、どんなにうまい役者の芝居を見ても、演技をする役者の生理感覚というか、素の部分と演技の部分の落差を、どのくらいテンションあげているかとか、どんなエロキューションを使っているのかとかイメージできるのだが、市原悦子にはそれがまったくできない。あるのは市原悦子が演じる役、ただその人。まったく素の状態がイメージできない。こんな演技、見たことがない。
 憑依型の演技というと、白石加代子がまずイメージされるが、白石はやはり鈴木メソッドという「型」があって、その「型」を利用して、神懸かり的な演技をする。ところが市原悦子は「型」に入らない。まったく、稽古場でインタビューしたのと同じ感じで、しかしまったく別の役柄の人になって、そこに存在している。前にも市原悦子を「その男ゾルバ」というミュージカルで生の演技を見たことがあったが、そのときにはこんなにすごいとは気づかなかった。
 72歳にして、あんな演技を見せてくれる人なんて、日本中探してもほかにいないだろう。ぜひぜひ、生で見に行って欲しい。28日まで上演。

Leave A Reply