劇場=三軒茶屋:世田谷パブリックシアター
●作・演出=宮沢章夫
 [劇中劇]
  清水邦夫作
  「朝に死す」
  「想い出の日本一萬年」
  「真情あふるる軽薄さ」
  「ぼくらが非情の大河をくだる時?新宿薔薇戦争」より
●監修=野村萬斎
●出演=上杉祥三、若松武史、中川安奈、下総源太朗、半田健人、上村聡、鈴木将一朗
評価:★★★★ (Very Good)11/12(昼)所見


 能のもつ知恵と洗練を現代演劇に還元するために、野村萬斎が監修してスタートしたシリーズ企画、現代能楽集の第3弾。今回は能の名曲「鵺(ぬえ)」をモチーフに、舞台のみならず、エッセイや小説の分野でも活躍する宮沢章夫が新作を書き下ろした。
 ヨーロッパのとある空港の待合室で足止めを食った日本の演劇人たち。出発地でも目的地でもない、さらには入国すらもしていない不思議な空間“トランジットルーム”には、彼らのほかにひとり煙草をくゆらす「男」がいた……。
 宮沢は今回の作品で、60年代の小劇場演劇運動をモチーフにとりあげ、その時代の演劇青年たちが持っていた演劇活動による革命という見果てぬ夢を現代の演劇状況と対比させつつ、能の「鵺」の複式夢幻能と対比させるという、非常にユニークな舞台を作り上げた。
 しかも自らが主宰する遊園地再生事業団では選ぶことがないであろう、商業性も加味したベテラン俳優陣ー上杉祥三、若松武史、中川安奈ーをプロデュース公演として起用しながら、演劇における歴史を背負った存在としての彼ら3人を劇中の役柄と対比させつつ舞台上に成立させたのは見事だった。
 劇のモデルとなった蜷川幸雄、清水邦夫たちがこの舞台を実際に観たというが、果たしてどんな思いで観たのか気になるところだ。

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