新国立劇場『舞台は夢 イリュージョン・コミック L’Illusion comique』

新国立劇場『舞台は夢 イリュージョン・コミック L’Illusion comique』
初台:新国立劇場・中劇場
12/3(水)−12/23(火・祝)
評価:★★★★(Very Good)12/5(土)夜所見
●作=ピエール・コルネイユ
●翻訳=伊藤 洋
●演出=鵜山 仁
●出演=堤 真一、秋山菜津子、高田聖子、田島令子、川辺邦弘、松角洋平、窪田壮史、三原秀俊、眞中幸子、坂田 聡、磯部 勉、金内喜久夫、段田安則
●美術=島 次郎
●照明=勝柴次朗
●音響=上田好生
●衣裳=太田雅公
●ヘアメイク=佐藤裕子
●アクション=渥美 博
●舞台監督=北条 孝


 新国立劇場の08-09シーズンでは鵜山仁が手がけるはじめの作品。コルネイユという、それほどポピュラーとはいえない作品をもってくるあたりのこだわりが鵜山らしい。
 宣伝コピーではかなり誇張した表現になっているが、ごくごくあたりまえの喜劇を劇中劇構造で仕立てている作品。目新しさはないが、それだけに役者の力量次第で面白くもつまらなくもなる、リトマス試験紙のような性格を持っている。
 さて、実際の舞台では堤真一、段田安則、秋山奈津子といった実力派がそろっただけのことはあって、楽しい内容となった。初めの30分ほどは観客がどう見たらいいのかとまどっていたせいもあって客席が静かだったが、”フランス古典の名作”というかしこまったイメージを忘れて単純に役者の演技を楽しめばいいと分かってからは、笑いで客席も弾み出した。
 先に上演されたピランデルロの『山の巨人たち』では、芝居をする者たちが教養のない民衆に理解されないまま殺されてしまうという悲惨な末路を辿るのに対して、このコルネイユの『舞台は夢』では、芝居をする者たちは身分的にも経済的にも世間からうらやましがられるような存在となっている。果たして鵜山は、今の演劇人についてどちらにあてはまると考えてこのラインナップを組んだのか、興味深いところである。

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