『国盗人』

6月22日(金)ー 7月14日(日)
劇場=三軒茶屋:世田谷パブリックシアター
評価:★★★★(VerryGood)6/30(昼)所見
●作=河合祥一郎
●演出=野村萬斎
●作調=田中傳左衛門
●衣裳=コシノジュンコ
●出演=野村萬斎、白石加代子、石田幸雄、大森博史、今井朋彦、山野史人、月崎晴夫、小美濃利明、じゅんじゅん、すがぽん、坂根泰士、土山紘史、時田光洋、平原テツ、盛隆二、大竹えり、大城ケイ、荻原もみぢ、黒川深雪、福留律子


 野村萬斎が出演するシェイクスピアを狂言の手法で翻案するシリーズの第3弾。過去2回は万作の会の企画として制作されたが、今回は萬斎が芸術監督を務める世田谷パブリックシアターの開場10周年記念プログラムの目玉公演として萬斎の演出・主演で『リチャード三世』を翻案している。これまでの『法螺侍(ほらざむらい)』『まちがいの狂言』では脚本を故・高橋康也が担当したが、今回は若手気鋭のシェイクスピア研究者である河合祥一郎が狂言と現代劇を組み合わせた形の上演台本を作成した。
 冒頭、夏の蝉時雨が鳴り渡るなか、客席後方から白いドレスの女性がパラソルを手に焼け落ちた古い寺のような場所にやってくる。焼け残った広間のようなところで彼女は能面を手にし「夏草や、強者どもが夢のあと」とつぶやくと、その場所でかつてあった戦いの思い出が甦えり、舞台左右から軍旗を持った侍が登場。いつしかそこは戦国時代の、赤薔薇と白薔薇の戦いの地へと変わる……。この場面は、劇の最後にエピローグとしてまた反復し、複式夢幻能の構造を踏襲することで、劇の構造を強化させている。
 劇としては過去2回の狂言によるシェイクスピアと比べて、せりふ、演技などいずれもかなり現代劇に寄った作りになっている。これは、過去2回は万作が中心となってシェイクスピアの狂言化を主眼として行ったのに対して、今回の萬斎は自分の演出家としての成長に合わせるように狂言と現代劇のブレンドを現代劇メインにすることで、自らの現代劇での演出力を強化させようとしたためだろう。
 登場人物では、王妃、アン王女、皇太后、マーガレットという主要な女性4役を白石加代子ひとりで演じるというのが注目されていたが、コシノジュンコの衣裳と白石の演技によって4人の違いをしっかり出せていた。また、萬斎演じる悪三郎(=リチャード)につきそいながら、戦いでやぶれたものたちに能面をつけて“死”を与える影法師役のじゅんじゅんが、面白い存在として光っていた。

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