在日ドイツ人演出家ペーター・ゲスナーとプロデューサー綿貫凜が昨年立ち上げた演劇ユニット、プロジェクト ナッター。その第2回公演は、ポストドラマ演劇の巨人ハイナー・ミュラー作の『ピロクテーテス』を上演する。

山本亨、塩野谷正幸、扇田拓也という男たち3人が激しくぶつかり合うギリシャ劇が、何を現代の我々に届けるのか? タイトルロールのピロクテーテス役の山本亨と演出のペーター・ゲスナーに聞いた。

今回上演される『ピロクテーテス』は、劇作家ソフォクレスがトロヤ戦争をもとに紀元前409年に書いた物語を、旧東ドイツの劇作家ハイナー・ミュラーが書き直した作品。

古代ギリシャ、ギリシャとトロイヤとの戦争は10年も続く膠着状態になり、ギリシャ軍の武将オデュッセウスは、若いネオプトレモスとともに、ある男を呼び戻すために無人島にやってくる。その男こそギリシャ最強の武人と言われながら蛇にかまれて手負いとなり、オデュッセウスたちが置き去りにしたピロクテーテスだった。うち捨てられた恨みの思いだけで生き続けてきたピロクテーテスを、勝利のためになんとか連れ戻そうとするオデュッセウスたち──。

演出のペーター・ゲスナーはハイナー・ミュラーと同じ旧東ドイツのザクセン州出身で、演劇について目覚めたのはミュラーの作品を見たことがきっかけだという。それだけにこの作品にかける思いもひとかたならぬものがあるようだ。今回は、タイトルロールで、膨大なせりふを語るピロクテーテス役の山本亨と、演出のゲスナーに作品のみどころや、今この作品を上演する意味などを聞いた。

プロジェクト ナッター公演『ピロクテーテス』は、3/2(火)−7(日)新宿三丁目・SPACE雑遊で上演。公演の公演情報はこちら


■自分の役柄について
山本が今回演じるのはタイトルロールのピロクテーテス。トロイヤと戦うために戦地に向かっていた途中、蛇に足を噛まれて仲間に置き去りにされたが、膠着する戦況の中、オデュッセウスとネオプトレモスが迎えにくる。ミュラー版の魅力は、ピロクテーテスを自らに重ねているところだという。


■役と自分が重なるところ
山本は以前、足の怪我で役者を断念するかどうか悩んだ時期があった。その出来事をピロクテーテスの気持ちに重ねているという。


■翻訳劇と和物の演じ分け
演じる側と見る側の多くが日本人なので、外国の芝居でも日本のものでも、演技を変えたりはしないという山本。それよりも、身近にいる人間を観察することで役を理解していけばいいと語る。


■演出のペーター・ゲスナーについて
テキストについて自分なりの解釈をもっていながら、役者たちの意見も取り入れる柔軟なところがペーターの魅力だという。


■共演者のふたりについて
塩野谷さんと舞台でちゃんと一緒に芝居するのはほぼ10年ぶり。存在感と情熱を感じられる役者として尊敬しているという。初共演となる扇田君は、先入観がなくてピュアに芝居をやっているところが魅力的、と山本は語る。


■今後の予定
4月に明治座で早乙女太一座長公演で『嗚呼、田原坂』(脚本:西田大輔、演出:岡村俊一)、夏に椿組『天保十二年のシェイクスピア』、そして2011年1月に新国立劇場『わが町』(作:ワイルダー、演出:宮田慶子)に出演が決まっている。


■演劇ファンへのメッセージ
山本亨から演劇ファンへのひと言メッセージ。


■今回『ピロクテーテス』をとりあげた理由
自分にとってハイナー・ミュラー作品は折に触れて上演したくなる作品というペーター・ゲスナー。


■ミュラー作品における『ピロクテーテス』
一見、分かりやすい構造の『ピロクテーテス』こそ、現在の日本の状況に必要な作品というペーター・ゲスナー。


■ハイナー・ミュラーにこだわる理由
ペーター・ゲスナーにとって、演劇を始めるきっかけになったのは、ハイナー・ミュラーの『戦い』を見たこと体験だという。


■出演者について
出演者3人について、火山のような山本、黒澤映画から出てきたような塩野谷、ベテランの中で健闘している扇田と評するペーター・ゲスナー。


■ドイツ演劇の日本語上演
ドイツ演劇の日本語上演は、その翻訳のところでテキストレジが働くというペーター・ゲスナー。そのため今回は演出として作品に手を入れることはしないという。


■今後の予定
年内にはもう1回プロジェクトナッターの公演を予定。せんがわ劇場の芸術監督も1年継続し、さらに来年には新国立劇場でオペラ作品の演出するという。


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取材:ステージウェブ編集部

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